エフェクター 回路 与太回廊

の 木造アパート で、男は エフェクター の製作に勤しんでいた。何の気なしに始めた、興味を持っただけ

なのに、ネット に有った回路図、部品表を頼りに 購入リスト を作り、なるべく近くの電子部品屋さんを見つけて

よく判りもせず部品一式を購入。素人の浅はかさ、期待、どんな音に変化するのか? が、ごちゃ混ぜになった脳味噌で

考えても作動しないものは しない。経験よりも知識なのか? 実践より理論が優先なのかと、自問自答の時間が過ぎていく。

此処はひとつ、ベテランの方に聴いたほうが早いのではないのか? しかし、安直に質問するのも気が引ける。

如何すれば良いのか、嗚呼ッ、神よ、二筋の光りを、御導きを、天空の女神よ。

「よぅっ!、おいら のこと呼んだかよ、何か判らない事でもあんのかよ、」

「あなた、3D ポリゴン部屋の ふたこぶラクダさん じゃないんですか?、エフェクター 回路製作は専門外の筈ですよね?」

「勝手に決めんなよ、エフェクター の ひとつ や 三つ、ポリゴン の 一枚 二枚、作業してりゃぁ、判んじゃないのかよ、」

「アラジン魔法のランプ のように、随分と御気楽に出現するものですね、信念など無いんですか?、」

「なんだよ、お前さんが考え込んでるから チョイと助言を、一筋の光を照らしてやろうかと思ったんだぜ、ほんとは暇潰し

だけどもよ、構わないだろ?、」

「ひまつぶし、ですか、」

「嫌ならいいんだぜ、人に教える、説明すんのは面倒くさいしよ、判らねえよ、って逆に怒られちまってもな〜、」

「じゃぁ、ちょっと聞きたいんですけど、この フェイザー エフェクター がどうしても作動しないんですけど、」

「ハナから そんな複雑な回路に手を出すから動かないんじゃないんかい?、最初は簡単なもんからだよ、」

「空中配線で ブースター を作った時は、一発で作動したんですけど、」

「それに味をしめて回路は簡単だ、と思ったんだろ、だから動かないんだよ、初心忘れずべからず、だよ、判ったか?、」

「ふたこぶラクダ さんて技術者じゃないんですか?、なんでそんなに ぶっきらぼう なんですか?、電子回路技術者は

繊細な方が多いって聞いたんですけれど、博士のような、」

「悪かったな、ぶっきら大雑把 でよ、勝手に イメージ されてもよ、こちとら生まれつき こんな感じだよ、」

「そういえば電子部品屋さんの販売員の方が言ってたんですけど、電話で部品の在庫を確認してきた お客さん が居て、

種類が多すぎて全部の在庫は判りません、ホームページの 部品リスト を確認なさって下さい、と返答したら、そんな事も

判らないのか! と、怒鳴りつけられたって言っていたんですが、その高飛車で傲慢な方って、らくださん ですか?、」

「おいらは、そんな非常識な物言いなどせんぞ、その程度で怒るなんてぇのは 大した奴じゃないな、脳味噌の毛細血管が

接触不良を起こしてんでないんかい?、」

「そうですか〜、本当に偉い方は偉ぶらない、大事な事だと思ったら自分で充分 調べてから、在庫確認ですかね、」

「判ってんじゃないかい、今ので何で フェイザー が動かないか判ったろ?、」

「接触不良ですか?、それは散々 確認したんですけれど、先が観えないんですが、」

「お前さん、詰めが甘いんだよ、絶対に大丈夫だなんてぇ個所が原因だったりすんだよ、脳ある鷹は爪を隠すって言う

だろが、しかしなんだな、鋭利な爪を使わずじまいで 一生を終える 大鷹 も居るそうじゃないかい、プッ、」

「能ある鷹、じゃないんですか?、エフェクター と何の関係が有るんですか?、ねぇ、フタコブさん、」

「能ある脳か、お前さん、ちいとは脳味噌 使ってみたらどうだい、電気の流れが見えないから テスター が有るんだろう

がよ、安物 テスター だから、なんて通らないぜ、電池が減ってなけりゃ同じだよ、」

「テスター で測っても、確認しても問題ないんですが、脳味噌は頭痛がするほど使っているんですけど、」

「頭 使った〜っ、なんて己で言っててもよ、実際は小指の先、爪ほどしか働いていないって話だぜ、トランジスタ が

オシャカ なのかも しんないな〜っ、それよかよ、この部屋なんとかならないか?、ハンダ付け作業の煙で雲の中に

居るようだぜ、煙いんだよ、鉛の成分を吸い込んで体に毒だしな、窓開けで扇風機を外に向けて回せや、排気だよ

排気、中毒になるぜ、」

「鉛中毒よりも、エフェクター が動かないのが気掛かりなんですよ、」

「そら始まった、幾らなんでも作業環境が悪すぎるのに、お前さん、酸欠状態じゃないのか?、気分を変えろよ、

頭 使ってじゃなくて鉛の ケムリ で頭痛なんじゃないんか?、紫の煙じゃないぜ、そんなんじゃ エフェクター なんぞ

動かんよ、」

「ラクダさん、扇風機を廻して鉛雲を排出させたら気分が変わりましたけども、虫が入ってくるんですけれど、」

「虫の 一匹 や ニ三匹、構いやせんぜ、ついでに お前さんの脳も回転させろや、」

「でもですよ、電子部品回路に虫が挟まって コンピューター が エラー を起こした事から、バグ (虫) が入っていて、

プログラミング に バグ がある、間違っている、になったと聴いたことがあるんですけど、」

「エフェクター が動かないのは バグ だと言いたいんか?、おまえさんの胃袋に寄生虫でも、いらっしゃるんじゃない

のかよ、」

「そんな事、言ってませんけど、回路図が何処か間違っているんですかね?、」

「間違っとるかもしれんがな、お前さん、その前にだよ、モニター 画面を観ながら写し取った、ミミズが のたくったような

手書きの回路図は合っているんか?、間違っていないなら電子部品を己で壊した、配線違い、ハンダ付け不良、部品の

数値間違いしか無いぜ、偶に電源を繋いでいなかった、なんてぇのも あんけどょ、トランジスタ の方向を間違えた

だけで、アース配線を1ヶ所 変えただけで作動しないことも有るんだよ、単純なようで奥深い、それが回路だよ、

カイロ でも回廊でもないぜ、」

「なんだか余計に判らなくなってきましたが、」

「今日は、止め止め、そんなんじゃ纏まらんよ、ネットの 変なサイト でも観覧して気分を変えろや、なっ?、」



「お、ま、え、さん、お前さん、何時までも そんなに熱心に ページ 眺めてないでよ、作業再開しろや、」

「もうちょっと観覧させて下さいよ、いま いいとこなんですから、ねっ?、」

「ねっ、じゃねぇよ、ネッ じゃよ〜、お前さんが手を加えなけりゃ何時まで経ったってよ、エフェクター は動かんぞ、

じゃあよ、動かねぇ、作動不良だ何処なんだ エフェクター 基板、おいらが観てやるから ちょいと貸してみな、」

「これですけど、どうですか?、」

「どれどれっ、なんじゃこりゃーよ〜っ、よくもまあこんなに グチャグチャ に配線できたものだな、手書きの 蚯蚓 回路図

のほうが まだマシだな、何処が悪いのか サッパリ 判らんぜ、実装 回路全体が ゴミ、ジャンク じゃねぇかよ!、おっと、

それじゃぁ ジャンク に失礼だな、ユニバーサル基板の配線はな、よーく 考えてから繋がないと収拾がつかなくなってって、

おい! 話を聞いてんのかよ!、」

「えっ?、今、ジャンクメール を削除中なんですけど、変なページ を眺めると ジャンク が もれなく引っ付いて来ますんで、

ちょっと待って下さいね、」

「ジャンク、グッチャン、ってよ、お前さんの頭に在中の脳味噌が ジャンク な ブレイン じゃないんかい?、なんだよこの

ハチャメチャ な 回路基板 はよ、前衛芸術か?、別の意味の 実験回路 か?、どうにもならんぜ、こりゃ〜よ、」

「でも、発明や発見、新たな回路概念は、失敗から、間違えから生まれるって聞いたことが有るんですけども、」

「なんだぁ〜?、こんな ヘタレ な ユニバーサル基板回路 作っといて、そりゃ無いだろ、なにが ” でも ” だよ、

Demo の デモ かよ?、大丈夫か? おまえさん、」

「大丈夫じゃないから 駱駝さん に御伺いしてるんですけど、若しかして コレ も有りなのかとも思ったんですけど、」

「無い無い、ありゃせんぜ、何が若しかして、だよ、若干 じゃなくて ワカセン でも無いな、信号も流れて無いぜ、

こりゃよ、イチ からやり直せよ、そのほうが早いぜ、」

「イチ から始めて コレ なんですけれど、」

「じゃぁ〜よ〜っ、ゼロ から初めろよ〜、零からよ〜、面倒見きれね〜よ〜っ、レイ、0、ゼロ は インド人 が発見したん

だってな〜、なんなら インド人 に相談したら ど〜だよ〜、カレー でも食しながらよ〜っ、作れよ〜回路をよ〜、」

「なに 不貞腐れているんですか?、それに インド で カレー なんて、安直ですよね、カレー を引っくり返すと、レーカ、

零か?、ゼロ にもなりますけど、」

「頭にくる、やっちゃな〜、全く、なに無茶苦茶なこと言ってんだよ!、」

「なんでラクダさん が、そこまで エフェクター の製作に顔を突っ込んでくるんですか?、まさか故郷 エジプト の カイロ で

” 回路 ” じゃないでしょうね、そんでもって串焼きの シシカバブー でも食べながら、与太話に花を咲かせたいだけ

じゃぁないんですか?、水道水 くらいしか有りませんよ、」

「シシカバブ は トルコ料理 だよ、それに シャシリック って言うんだぜ、正確には チョイ と違うって話もあんけどよ、

回路で カイロ なんてぇ こと有るかい!、そんなこと言ってんと帰るぞ、」

「ちょっと待ってくださいよ、さっきから聴いてると ノウハウ らしき 方法論 を言ってませんけど、」

「どうすれば動くか、ってか?、お前さんも判らんやっちゃなー、電子ぐらいの大きさになって 線材 や トランジスタ の中を

縦横無尽に走り回ってみれば、判るんでないんかい?、そー いえば、人間の体の中に入っていく ミクロの決死圏 てな

映画が有ったな〜っ、後はよ〜 怪奇話の 殺人カプセル ってのもな、プッ、」

「もう、いい加減にして下さいよ、」

「いい加減にしろだぁ〜、だからいい加減に言ってんだよ、大体よ、電子回路なんて難しそうだけどもよ、意外にいい加減

なもんだぜ、良い加減じゃないぜ、インド人の ゼロ の発見は凄いと思うけんどもよ、モノ を数える時、なんで 10進法 で

計算なんだよ?、人間の手の指が 10本だからだってよ、ゼロ は考えつかなかったんだと、両手で2本だったら、

2進法になってたかもな、3進法かぁ?、フィート は足の長さで、インチ は親指の幅からなんだと、いい加減に決めてん

だろ?、そんなもんだよ、」

「だからって、イイ加減に作業を進めても完成できないんですけれど、」

「いい加減の 加減 が難しいんじゃないんかい?、鼻でも穿りながら気楽に組めや、なっ?、エフェクター 回路の寄生虫に

なった気分で、舐めるような細かい確認でも構わんぜ、だけどもな、回路は嘗めるなよ、」

「イイカゲン じゃなくて、完璧に仕上げたいんですよ!、頭の中で完成品が出来上がっていて、妥協は嫌なんです、

今は テクニック が追いつかなくて グチャグチャ の実装回路かもしれませんが、細かい所に気をつければ、慣れれば

綺麗に性能良く完成させられると、ハンダ の扱いが悪いだけだと思うんですよ、」

「随分と大風呂敷を広げてくれるじゃねえかよ、何に対して完璧なんだよ、己の理想と比べてか?、完璧の度合いなんて

ものはよ、寒暖器のように上下するもんなのか?、モノ作りに絶対、完璧なんて無いぜ、絶対零度じゃあるまいしよ、

温度の度だって ” えーからかげん ” な人間が勝手に決めたんだろ?、ゼロ も概念だろが、違うか?、」

「そんなこと聞いているんじゃないんですよ!、基準に完全に達した エフェクター を製作して、見栄えも良く、使いやすくて

利益率の高い エフェクター 群 を販売して儲けたいんです!、アナログ回路の 特許 も取得できれば、特許料も入って

きますから、」

「基準てな、なんの基準なんだい?、壊れなくて手間の掛からない利益の上がる、ユーザー に受けの良い製品を作る、

なんて考えた時点で間違ってるぜ、さっきまでは フラックス の匂いだったが、なんだか生臭〜い ニオイ がしてきたな、

基準や使用感、満足度なんてぇのはな、ユーザー が決める事なんだよ、それに何だよ、特許料ってよ? アナログ回路

の特許なんてのは、有って無いようなもんだぜ、そんなんじゃ完璧どころか断崖絶壁じゃないんかい?、基準を満たす

なんてぇゴタク 並べてんけどもよ、エフェクター 使用者の考えている事、感じている事が全部 判るのかよ、統計を採って

平均値を計算して、てなこと言ってんのが居るけどよ、それで利益を上げられるのか?、そんなら簡単だがな、無理だよ、

ユーザー が、その時の気分で エフェクター を使っている以上はな、」

「でもですよ、使ってくれた ユーザー が気に入ってくれて評判になれば、その モノ の イメージ が上がって皆さん買って

くれるんじゃないんですか?、」

「おまえさん、妄想かい?、だ〜れも使わなかったら、買わなかったら どうなんだよ、売れないものほど CM を、宣伝を

ってな、大したものでなくても、テレビ で ガンガン 流せば消費者は洗脳されて買うんだってな、その ヘンテコリン な

エフェクター 売る為に 百億円 掛けて広告 打つのかよ、本末転倒だぜ、ご家庭に 一台ってか?、プッ、」

「ニッチ、隙間製品としてなら成り立つって聴いたんですけど、誰も製品化しなかった インストゥルメント なら商売に

なるって言われたんですけど、」

「誰に仕込まれたんだよ、お前さんの耳の隙間に吹き込まれた考えなど通用しないぜ、なにが ニッチ だよ、二進も三進も

じゃなくて、西洋建築の凹んだ壁の窪みのことだぜ、ニッチってよ、それに インストゥルメント の使い方、間違ってるぜ、

重い想いを拡張させて、全世界に何億台 もの エフェクター を売りつけようなんてぇこと、考えてるんじゃないだろうな、」

「そんな大袈裟なこと考えてませんよ、少し売れればいいんですけど、」

「おんなじだよ、どっちにしろ 脳内販売 だろ?、実際に売れたとしてもだ、ユーザー が間違えて コネクター を逆刺し

しただけで壊れるようじゃ、話にならねえよっ、売った後の サービス、フォロー なんか考えてないだろ、」

「それはですね、追々と考えていきたいと思いますが、どうでしょう?、」

「オーイ、オイ、どうでしょう、じゃねえよ、売った後のほうが大変だぜ、そんでよっ、エフェクター は仕上がったんかい?、」

「ラクダさんが、背中を掻くのに ハンダゴテ 使ってるじゃありませんか、孫の手じゃないんですけど、」

「おっと、悪い、猫の手も借りたいぐらい忙しいのによ、悪り〜な、おいらの 前足 で手伝ってやろうか?、」

「結構です、」

「ケッコウってことはよ、手伝え、って事か?、足伝えかい?、」

「日本語って難しいですね、ラクダさんの足だと コンデンサー 踏んづけて オシャカ になるのが関の山ですから、」

「皮肉かよ、かわにく、ってか?、コンデンサー 踏んづけるだ、孫の手がどうした、串焼きが食いてぇだ、って全くよ、

ハンダゴテ で接合しなくったって、部品の足を捻って繋いでも、ワニ口 クリップ で配線しても ブレッドボード で組んでも

作動するんだぜ、お前さん スタートライン にも着いてないじゃねえかよ、能書きはいいんだよ、見直してみな、」

「アッ、電源を逆に繋いでいました、なんででしょ?、」

「ほらみろ、あほらしい〜っ、実際の経験も浅いのに判ったようなこと言ってんからだよ、しかしなんだな、実務経験

じゃない業務って有るんだってな、虚務経験 3年以上ってか?、なんの業務だ、虚無僧 か?、」

「今まで、口うるさいだけの フタコブ らくださん だと思っていたんですけれど、流石ですね、どれぐらい回路を組んで

きたんですか?、」

「クチうるさいは余計だよ、自慢じゃねえけどよ、回路は組んだこと無いよ、思考回路 も 螺旋階段 も 回廊 もな、」

「えっ?、そー なんですか!、ということは、これが ほんとの 脳内 生産技術研究所 ですか?、」

「妄想研究 じゃなくてよ、思考 製造技術 錯乱散乱所 だよ、腐ッ、おいら としてはよ、お前さんの エフェクター が動けば

どっちでも構わんしな、ひとりじゃ完成できなかったんだからよ、ちぃ〜とは感謝してもいいんでないんかい?、」

「はァ〜っ、それでは、お礼に 水道 の 水 でも飲みますか?、」

「おいらはな、美飲家 だからよ、グルメ な中近東の 硬水、鉱質水 がいいんだけんどもよ、オアシス の湧き水、

パピルス の葉についた 一滴の雫 も、こたえられねぇけどな、ま〜いいか、どれ、タップリ いただくぜ、」

「ああっ!、回路に水が!、せっかく作動した エフェクター に、火花が散ってる、壊れたーっ!、」

「アッ、すまんっ、悪い!、お菓子食って、可笑しいよ、水なのに、大爆笑だよ。 コレ は パクリ かぇ、?、参考か?、」

「なんだよ〜っ も〜っ、らくださん!、何、苦笑いしてんですか、日射病で おかしくなってんですか!、ラクダ なのに、」

「そんな ギャグ 言う余裕が有るんなら大丈夫だな、よー く 乾かせば平気じゃないんかい?、それとも作り直すか?、」

「新しく作りますよ、もうっ!、今度は完璧に製作しますから、エッチング基板で、」

「そーかい、良かったじゃないかい、おいらの ウォーター ハンマー の 一撃も 無駄にはならんかったな、新規に作って

心機一転 ってか?、ウォークマン じゃないぜ。  .com ってのは コマーシャル って意味だとさ、」

新規の 心気 エフェクター 回路製作