インチキ シンセサイザー 考

moog アナログシンセサイザー は ムーグモジュール に始まり ムーグ に終わる。釣りも 篦鮒 に始り

ヘラブナ に戻ると云うではないか。壮大かつ威厳に満ちた高く聳える眩いほどの ムーグモジュール。私は、この

孤高モジュール が手に入るのだったら死んでもよい。とは思わないが、無駄に大きく スパゲッティ が絡み合っている

ような MOOG III は再販される事もないし、取り扱いも面倒。EL&P の キースエマーソン が所有していた MOOG III

には、その当時ブラウン管 が装着してあって、波形を表示していた。その後、エマーソン に 「あの ブラウン管 の波形で

何を確認していたのですか?」 と インタビュー したところ、「モジュールラック が空いていたから、そこに ブラウン管 を

押し込んで適当な波形を映していただけ、MOOG とは なんの関係もないんだ」 と答えた エマーソン。

流石、ロックミュージシャン、かましますね。とはいうものの、自分の大事な腕に負担を掛けるほどの激しい演奏と、

ハモンドオルガン を独楽のように振り回し、鍵盤に 剣 を突き立てるような ライブ演奏 は、エマーソン の真骨頂。

そのエマーソン、ハモンドオルガン は鍵盤が折れるほど乱暴に扱っても、モジュラームーグ は大事に扱っていたそうな。

自分の手足のように使えて、多彩な音を奏でてくれる巨大な音色箱。その箱の中身は、今では考えられないほど贅沢に

作られていたそうな。一見、無駄とも思える回路、スカスカ な部品配置、太い配線材など生産性や効率を無視したような

作り。大量に製造されることを前提にしていないので当たり前だが、ある意味 贅沢で 特注品 のような MOOG III で

なければ、あの音にならないのだそうな。無駄なものを省き、電子部品の選定も設計上の性能 ギリギリ で作られた

生産効率重視の製品は、余裕を持って作られた昔の製品と音が違う。思い込みではなく、コスト削減 を繰り返した結果、

本来の性能を発揮している 大量生産品 など無い、という話を 品質管理 に携わっている方に聞いて呆れてしまった。

古き良き日の手の届かない高価な モジュール、などと言っても始まらない。昔は トランジスタ も IC も高価で

買えなかったが、今は大量生産のおかげで手軽に購入できることを思えば、良い時代になったのか悪くなったのかは

分からないが、今でも高価で手に入りにくい 希少 MOOG III を自作してしまおうかと、知人に相談してみれば

(放送禁止用語) 呼ばわり。毎度の事です。

つづく。