桜田門外 門前の桜ギター

「御隠居、ご隠居さん、大丈夫ですかい?、」

「ふぇ〜、痛かった、死ぬかと思ったわい、」

「なんのこた〜ないですぜ、おいらが、この オ、イ、ラ、が手を引き、長屋から御隠居が 落人 を携えて日光を浴びた瞬間、

煙りのように平家の方々が消えていったんですから、ちぃ〜とは、オイラ のこと、見直したでっしゃろ、太陽の光りを受けて

御隠居 が 藻屑 のように消えたら意外と面白かった、」 「なんじゃと!、」 「んですけどね〜っ、プッ、ご隠居、さ、ん、

落人 に掴まれていた両耳、ダンボ の でっかい耳みてぇに真っ赤に腫れあがっていますぜ、パォ〜ン な 御隠居っ、」

「象だ、子鹿だ、農耕馬、お前さん は 動物園 でも経営なさってるんですか?、ってなもんだな、更にもあらず 駱駝 なんか

連れて来た日にゃぁ、」 「なんか用か?、」 「グゥイター のことなど、なんだ?、ホホーぅ、桜の花が満開じゃな、熊八、

桜吹雪の舞い落ちる小道を歩いていて、普段は只の砂利道だがな、桜色の 絨毯 の上を歩いているようじゃろ、これで

なんも思いつかんか?、ただ綺麗なだけか?、桜小道 の 桃色桜、粋なもんじゃな、お前さん は どぅ考える?、」

「風に煽られた花びらの協奏演舞場、ですかい?、微かに聴こえる小枝の囁き、てなもんですかぃ、ちょいと照れるな、」

「この桜の木、この幹の締まり具合、色艶、柔らか加減、グゥイター の 材料 に ピッタリ じゃわい、お前さん、斧 と 鋸、

調達できるよな?、見習いでも 大工 の端くれじゃろ、こんくらいの 桜の木 だったら、お前さん でも切り倒せるよな?、」

「この罰当たりがーーっ!、幾らなんでも それは我慢できませんぜ!、おいら が 血の池 に浸かってる御隠居 へと、

一本の 蜘蛛の糸 を たらして助けたのと同じじゃぁないんですかい?、ご隠居!、長屋までの 一本道に淡々と、静かに

並んで植わってる 桜のトンネル のようなの、おいら大好きなんでっせ、それを切り倒して グゥイター を作ろうなんてぇ、

絶対に駄目でがんすよ!、だいたいですよ、材料になるまでには 板状 に切り分けて何年も寝かせて、木材に呼吸を、

自然乾燥で湿気を、生乾き のまんまだったら曲がったり捩れたり割れたりと、良い音の グゥイター には なりませんぜ、」

「お前さん、言ってることが中途半端に変だよ、冗談じゃよ、じょ〜だん、お前さん だったら 一本の 桜木 で 40本 の

グゥイター が作れまっせーっ、チェリー 材 とやらは貴重だから これで大儲け、タヌキ の 皮算 じゃぁないけれど、好きな

楽器の商いで飽きずに商売大繁盛、一石 221 てなもんすかね、なんて言うのかと思っとったがな、意外と真面目だった

んか。ほれっ、此処が ワシ の 住居兼 仕事場 だけども、材木問屋 のほうは開店休業、とゆうより、閉店無業だけどな、」

「数はそれ程でもないですけんど、質のいい板材が あるじゃあ ないですかい!、なんでぇ、桜材 も有るのに、桃花心木、

楓材、朱檀材 まで揃ってんのに、もぅっ、」

「それでじゃ、熊八、お前さん の腕を見込んでな、」 「散々、丁稚だ、新米 だ、って云っといて、でやんすか?、」

「それは 言葉の彩 というもんじゃよ、腐るな クサル な、」

「彩 じゃなくて 彪 じゃ、文、綾、絢、かもしれませんでっせ、どれか選んで下さいな、」

「まぁいいがな、お前さん には いい話 だと ワシ は思うがな、事業じゃよ、この材料で グゥイター を作って大儲けじゃ、

グゥイター 製造 販売 じゃよ、なっ?、お前さん だったら、そぅさな〜、製造技術責任者、か?、経営開発部長 かな、」

「そんな簡単に作れるわけない でっしゃろ、高度な技術と 専用工具 が無けりゃ、絶対に無理でっせ、」

「工具は有るんじゃよ、潰れた 軽音楽 楽器製造所 の 工具 を タダ同然 で仕入れたんじゃ、これで お前さん の腕が

良けりゃ〜、鬼瓦の反転、七転びの独楽、熊八起き じゃて、ワシ は 丁稚番頭 でよいから、なっ?、」

「作れたとしても、商標力 が無ければ売れやしませんぜ、御隠居、甘いですよ、それに 糸巻き やら、弦渡し やら 銅巻き

磁石 なんかの部品が無いでしょ〜ぅが、」

「ふっ、ふっふっ、糸巻き、弦渡し、固定器具 は買うとしてじゃ、銅巻磁石 は お前さん の手巻きだな、手作り、手巻き は

有り難がられるぞ〜、それが ” 売り ” じゃよ、商売には ちょいと五月蝿いんじゃよ、この ワシ はな、フッ、百年以上も

前の 暖炉の木材 を使って、全部 手作り な グゥイター 製作者 にして有名な 演奏家、これは イタダキ じゃて、なんなら

工作機械 も 中古品 を安く買うかのう〜っ、機械 も作るか?、ついでに 弦 も、手、作、り、なんてどうじゃ?、」

「鉄鉱石 から採掘の、加治屋さんに 丁稚奉公 の、修行の後に 鉱石 を熔かして引き伸ばし、グゥイター 弦 を巻き上げ

て、なんて無茶なこと言いそうでやんすけど、一世紀 ぐらいかかるんじゃないんですかねぇ?、」

「茶でも飲むか?、それよか作業を始めるか?、社屋は此処で構わんだろ、狭いか?、贅沢を言っちゃぁ〜 いかんぞ、

林檎舎 の 電子計算機 も、最初は 大八車 の 車庫 で製造されていた、ってのがな、」

「マチ針 一本 作るのだって、原料からでも出来ないって云われてるのに、だから 分業 で 効率良く 作る工程が できた

のに、オイラ だけじゃ 無理 ムラ 無駄 だってのが判ら」 「ワシ も手伝おうか?、」 「ないんですか!、もぅ、」

「おまえさん、能書きは いいんじゃよ、トンテンカン と作ってりゃ慣れるて、孤高の グゥイター 製作者 の 称号 が欲しく

ないのか?、何時までも 頓珍漢 な琴ばかり云っとらんで、ゴリゴリッ と削ればな、作れないと思わずにだな、お前さんの

” 能力 ” を最大限に活かすんじゃよ、糸鋸 も ノミ も揃っている、これで なにが不満なんじゃい、衣食住 は ワシ が、

この わし が保証じゃて、作業開始じゃ!、忙しく働くのは楽しいじゃろ、なっ?、頓知 なんぞ効いても生姜んないぞ、」



「御隠居、やっとこさの、さ、で、こんなもんですが、どうでっしゃろ、ヤットコ も使いましたけんども、ふぅ〜ッ、疲れた、」

「どれどれ、ドレミふぁそ、っと、なんじゃ〜い!、こりゃ〜ぁ!、誰が レスポールさん の グゥイター を真似しろって言った

んでぇい、しかし良〜く出来とるな〜、って、コラーッ、完全自前製品 じゃなけりゃ意味無いんじゃぞー、完璧に作りよって

からに、これは此れで高く売れるかも、だが 模倣品 を売ったら チョイ と、」 「声が でかくなったり囁いたり、言葉使いが

変わったり、御隠居、御不満ですかい?、陶芸家 のよぅに叩き壊してみましょうか?、」

「お前さん も判っとらんな〜、陶芸品 は仕上がりが満足できないから、作り手の基準に達していないから、仕方なく壊して

るんじゃよ、国内 の 電子計算機 製造会社 ではな、不良品 や 返品 の 高価な製品 を床に置いといて、重量級の機械で

踏み潰すんだと、製品 や 部品 の 横流し防止 だってんだけんどな、それで棚崩れ、値崩れ、不安定な 品質環境 が起き

ないよ〜に、だそうじゃ、」

「まだ、一本 しか作ってないでっせ、」 「そんなこと、言っとるんじゃぁ ないわい!、それとな、これとな、あれとな、じゃない

その レスポール の マガイ品、じゃのうて、お前さん 至高の グゥイター、塗装されて無いのは売れんぞ、ニトロセルロース

とゆう 西洋漆 を塗れや、無かったら お前さん が作るんじゃよ、ニトロ は 綿花 から出来てるそうじゃから、先ず綿 を生産

じゃ、判ったかな、そんなに甘くはないんじゃよ、厳しいんじゃて、ちょとまてよ、熊八、板材を組む際に、ニカワ を使った

のか?、飯粒 じゃないだろね、」 「西洋 の 木工用ボンド ってのを塗って張り付けて、でやんすけど、」 「ボンド に 西洋

も 東洋 も あるかい!、この トウヘンボク、膠 を使わなけりゃ絶対に駄目なんじゃ、ど〜も 作業 が早いと思たら。硫酸 と

硝酸 を混ぜた液に 綿花 を入れると 綿火薬 が出来るそうじゃけんど、作業場 を吹き飛ばさんでくれよ、精製技術 が無け

りゃ、爆発 は無いそうだけんどな、細かい 粒子 が舞ってるだけでもな、小麦の粉 でも 爆発 の危険が有るんじゃぞ、フッ。

ニカワ は動物の 皮や骨 を煮て作られるそうじゃから、そんなら、ほれっ、お前さん が連れて来た 農耕馬 と 子鹿 で、」

「膠作りの 材料 に連れて来たわけじゃ〜 無いですぜ、全く もぅ、農耕馬 は風呂に つけてもいいんけんども、子鹿 は

絶対に駄目でっせ、」 「馬 は良くて 鹿 は なんで駄目なんじゃ〜ぃ、この似非俄、」

「おいら の勝手でしょ、」 「牛 は食ってもいいけれど、鯨 や イルカ は駄目だってぇのか?、誰が決めたんだい?、」

「西洋人 でしょ、それに 子鹿 なんか食べても美味くないでしょ?、」 「子鹿 を食ったことあんのかな、農耕馬 は 肉 が

締まってて旨いのか?、魚 は いいのかな?、鳥 はよ、植物 の 野菜 だって生きてんだよ、主食は 霞 かな、お前さん?」

「牛 くらい しか 無いですよ、輸入肉 を食べたぐらいで。御隠居、オイラだって それが 殺生 だってこと位、判ってまっせ、」

「お前さん、判っとるな〜っ、殺生グゥイター で 販売開始 じゃ!、ふ仏っ、」

「だから駄目だって言ってんでしょ、動物の 接着剤 じゃなくて タイトボンド っていう強力な専用品が有るんですから、ね?、

そんなに変に拘るなら、綿花落花 じゃなくて 漆 を作ればいいんじゃないんですかね、ウルシ は大変でっせ〜っ、塗った

こと無いですけど、」 「そんなら、そんなに 子鹿 が可愛いなら、その タイトボンド、ちゅうのと、原油 から作った ラッカァ、

でも使えばいいじゃろ!、全く、それぐらい自分で考えてだな、」 「ドッチ なんですか 御隠居、グゥイター 作りの 専門書

でも読み かじったんですか?、その内容に振り回されてるんじゃぁ ないんですか〜っ?、タイトボンド も 原油半分 で、」

「もう ええがな、助言を、お前さん の為を思うてじゃな、言うたまでなんじゃがの〜っ、煮トロ、ボンド のまえに、お前さん

には、どんな グゥイター を作りたいかゆうのが判っとらんな、このワシ が、この わし がじゃ、考えた グゥイター をだなっ、

お前さん に、どうじゃい、これ、ふふっ、」 「パクリ は駄目だって散々云っといて、これ ですかい?、」

「ぱくりとは、これまた失礼じゃぞ、熊八、お前さんが考えつかんかったからとて、その言い草は無いじゃろ、」

「ご隠居、ギーガ― さんの 原画 からの応用、引用物 でっしゃろ?、零 から考えたもんでもないのを、ワシ の オイラ の、

わたくしが、ってのは、プッ、」 「笑ったな、」 「怒ったんですか〜 巨匠 御隠居〜、」

「その程度じゃ怒らんよ、巨匠 でなくって 虚飾 グゥイター だと云いたいんじゃろ、言わんでも判るぞえ、お前さん?、

ちっとは 人の努力 っつうもんを理解できてもよいんでないんか?、そのような物言いで、才能を開花できずに潰れてった

先人達は多いんじゃよ、世界初の 有人飛行機 も、電気グゥイター も、先物取引 も、日本人 が最初に考えた、ってな

書物 を読めば、」 「考えても、ものにならなきゃ意味無いでっしゃろ?、特許取らなくちゃ、」 「お前さんは、全く 、もう、」

「なんですかい?、儲からないでっしゃろ ? 、違いまっか?、霞 でも食えってんですかい ? 、より良い暮らしを求めるのは

駄目なんでっか?、誇りも食えまへんがな、」 「変な 京坂弁 は失礼じゃ、止さんか、」

「茶々入れたのは 御隠居でんがな、違いまっか?、ご隠居は イイ 御身分ですねェ〜、親の財産を食い潰せば判るかとは

存じますけんど、オイラには そんな余裕など有りまへんがな、おいらを 口車 に乗せて面白いんでっか ?、」

「チャチャ なんぞ入れとらんぞ、」 「そんなもん、お茶 なぞ結構でんがな、猫舌 だってこ、」 「之は、茶 ではないんぢゃ、

膠 じゃよ、」 「コレを私めに飲ませて、どうなさるおつもりじゃ、もしや、もしやコノわらわを人間椅子ならぬ人間楽器へと」

「ふざけてる暇が有ったら!売れる楽器でもサッサと考えて金稼いだらどうじゃーーッ、」

「その膠、動物の、でやんすよねぇ、」 「いやあの、 雀を、」 「えっ、、?」 「鷺 の、」 「それは殺生、でっしゃろ?、」

「だからその、骨付き牛を、」 「臼 ?、」 「牛肉 じゃよ!、もぅ、」 「御金持ち、良い御身分なんすね〜〜〜―っ、おいら

なんぞ、鯵の開きが精一杯、一生のうち、一度でもいいから腹いっぱい 国内牛の御肉 を食べたいのですがね〜〜っッ、」

「グゥイター の塗装が巧く塗れたら、じゃよ。 それを云うのは。 今、思いついたけんど、ヒラメ型 の グゥイター っての、

どうじゃ?。 カレイ でもいいけども。」 「ニトロ の 西洋漆 、でしょ?、塗るのは。綿花の栽培 から始めなくっちゃ駄目です

からねえ〜。 八十年 ほど掛かりそう。 ねぇ, 御隠居?。 ご隠居さんも、ちっとは 手、伝、っ、て、下、さ、い、よ。」

「わしはな、ピック よか重たいもの持ったことないんじゃよ、自慢じゃけんどっ、」 「おもしろくない、ですよ。」

「そんじゃ試作の青写真、どうじゃいこれ、」  「 だから言っ、 もう、  詰めが甘いでっせ。 御自慢の 一品物でっか?。

御隠居さんの 水車発電設備 、使わさせてもらったのですけんどねぇ、水車考えた御方は天才だと思」 「どぉぁれが使って

良いとゆうたんじゃいッ!、無駄じゃぃ無駄じゃて、楽器は人間が、水の力を借りるぬわぞと、駄目じゃだむぇじゃぞぃ、

ピック の 固定法 と。爪の先を使う気か?。水 はな、電気を通すんじゃよ、真空増幅器 しか、石 の 増幅装置 は駄目じゃ

ぞえ、音が好かない、好みではないのじゃよ、判ったかえ?、電圧 が違うのも知らんのかのぅ。  ふっ、嘆かわしい、

電気 の知識の少なさは、 ふぅ〜、言うて分かるるものかのう、  ちょと待てよ、 グゥイター と 真空増幅機材、それと

小型水車発電機 の組み込み販売じゃったら、少々高くとも売れる公算が、 いや、だが御購入の 客人 の感電の心配が」

「 御隠居?、魚の浮き袋 、鍋 が煮えくり返ってまっせ、 最も優れた 接着剤 なんでっしゃろ?。」

「えらいこっちゃ、熊ッ!、熊八っ、眺めとらんで、さっさと その 銅鍋 を火から外すんじゃッ、」 「御隠居のでやんしょ?。」

「この怒腐れがッ!、わしが精魂込めて煮込んだ最高水準の 接合材料 だぞぃ!、そんじょそこらの、こらーッ、」

「熱いのでがんしょう?、嫌ですよ。」 「全くッ、つつつ、っ、熱ッ、冷水へと浸けて 塩 を少々、じゃあないわいッ、治療費

もらうぞい、甘い奴じゃのう、もうちっとのとこで 浮き袋 が台無しじゃて、ふぅ〜、」 「騒がしい人ですねぇ〜御隠居さん。

甘いじゃなくて熱い、ですぜ。」 「 もうえぇがな、気分の悪い、これはな、しょうるり、三百匹 の 魚 の浮き、肴 言ぅても

ダボ鯊 ではないんじゃよっ、大変貴重な、国宝級品質を得る為の」 「でも 魚 、でしょう?。」

「言うたなッ、この 備長炭 も安くはないのじゃよ、判らん奴っちゃのう、」

「御隠居?、呼び鈴 が鳴ってまっせ、誰か 客人 が」 「耳 だけは良いようじゃの、 ふっ。  へ〜ィ、少々御待ちを」





「御隠居さん?、あの声は、ちりめん屋さんの 若女将 でっしゃろ?。借金の催促 ?、だって払いに行ったん」 「煩いわッ!」

「寿司でも食って、一杯 飲んできたんでっか?、 ぷっ、 全く、ってのは、ごいんきょさんへの 福神漬け、じゃない、全く

困った 人 ですねぇ〜。」 「酢 や 酒 の香りが漂っとるか?。 だからの、この 浮き袋 を無理 言って 大将 から、だから

文句 あるめぇッ、! 熊八、一得がな、この ワシ の 財布の麻紐 はの、ギッチギチ なんじゃよ。言うとくがの、」

「なんも言うてまへんがな。 御隠居、誰か来た様でっせ、呼び鈴が。」

「このっ、忙しいっちゅう時、誰じゃいッ、 へ〜ィ、少々御待ちを」




「あの声は誰でっか?。」 「お前さんに言うても、な、いいんじゃよ。寿司屋さん じゃって、」 「ツケ が、どうのこうのって。」

「五月蝿い奴じゃのう〜」 「誰か来ましたぜ、呼び鈴。」 「今日は厄日か?、誰じゃいッ!、全く、 へ〜ィ、少々御待ちを」



「 熊八、誰も居らんぞ、」 「落ち武者、 かも、  プッ。」

「 くま八、そんなこと言うと、折角、お前さんの為と思うて 寿司の出前 を、要らんのか?、お前さんの働きっぷりを考えて、

この ワシ がじゃ、この隠居が 三人前の寿司 を、お前さんだけの為、じゃぞッ、判らぬ奴よのう。 ふぅ〜。 グゥイターも

もうちっと咲くッと作れば、この隠居の懐具合も」 「呼び鈴、が。」 「今の鈴は聴こえたぞえ、。 へ〜ィ、少々御待ちを」


「このッ、馬鹿馬 が!ッ。誰がこの 呼び鈴の紐 を引っ張っていい云うたんじゃいッ、熊八ッ!、誰が連れて来て良いって

言っ、  こぉうらァ――ッ、猫舌の分際で、この 野良鹿 がッ!、わしの大切な 浮き袋膠 の味見を、茹でてまうぞッィ!、

この鹿も馬もお前さんもわしの足を引っ張りよって誰の設備だと思うとるんじゃい光熱も工具類もこのわしのじゃぞい判って

るんか?舐めよってこの白熱電球も水車電圧も家屋の室内充満酸素もじゃぞぃ!、全くッ、熊、熊八ぃ、何処行ったんじゃ

いッ出前の寿司なんぞ摘み食っとったら只じゃすまんぞぇ、熊ッ熊ツ、なんじゃいその大八車わっ、」 「これですかい?。

門戸 の間口 広げて入れたんですがね、このほうが効率的かと、グゥイター の」 「誰が戸口を広げて良い云うたんじゃ

い!、大体が、そんな馬鹿でかい大八車、作業場がいっぴいっぱえ、じゃのうて一杯イッパイ、邪魔じゃろが---っ、違うか

へ?、」 「だからですよ、ねっ?。」 「ねぇ〜〜じゃねえわッ、」 「大八作業台っつうこってすよ、作ったら運ぶ、二石四鳥

でっせ。」  「た〜〜〜〜ーーー〜〜〜〜〜〜〜 たわけがー------- −ッ、 もうっ、この。 熊八、お前さん判らぬのも

無理はない、若い若い、作業効率とその概要、項目集点の拡散と設計技術との積算集積、利益率と販売促進過程、切削と

接着、木質振動の形状変化の、  なんじゃい、今忙しいんじゃて、そのデカイ図体、邪魔だと云うても、ぁあん? なんか用か?

ウマっころ。 痛ッ、わしはグゥイターの材料じゃないん、板多々、」 「ご隠居、この農耕馬、落人が取り憑いてるのかも、

落人、エチュード、前奏曲、ってか?。  馬の前足は強力でっせ、シャコ万、万力、蹄鉄あるから掴めない、だったら

大シャコ貝 のよう挟めばよい、か? ぷっ。」 「くまふぁちぃ、」 「なんでっか〜。? 」 御隠居

「言うてることが判りまへんがな。」 「 痛ッ多多たちつてと、なんじゅわい!この農耕馬、方向転換の補助にコノわしを

使いよって。熊ッ!、ちゃんと躾んかいッ、」 「  ぷッ。」 「笑ぉたな、だから言うとろうが、この作業場へ大八車なんぞの

大物 入れるから、なんじゃぃ、その顔は。 何か用か?、砂利鹿。  そ〜かいそーかい、今日の夕飯は子鹿鍋と馬刺し

じゃな、」 「もぅ、ご隠居 , 止めておくんなさいまし。 夕ご飯は、御、寿、司、 でっしゃろ?。 蛸飯 か ?、はなしですぜ。」

「下らん、出前鮨の空桶へ湯を入れ酢汁でも飲んどけ、嫌じゃ嫌じゃ、どいつもこやつもこのわしのいうことが判らぬらしい

の、まったくもって嘆かわしい、困ったものぞよ、理解できぬならばできぬと何故いわんのじゃ、ちいともわしの考えが

解っとらんのぅ、いやじゃこまったものじゃのぅ、溜息まじりの商いなんぞ、このわしが最も判ってるのじゃて、熊八もこの

わしの水準まで、 いや無理かの〜ぅ、」 「グゥイター 作ってるだけでっしゃろ?、御隠居さん。」 「なんじゃと?、そ〜ゆぅ

考え方は好かないのじゃよ、このワシはな、いま製作中のこのグゥイター、まだまだじゃのぅ、鑿や鉋、玄翁の使用料も

御給金から差っ引いてもよいのじゃぞ、」 「御給金なんて貰ってないですけんども。」 「当たり前じゃて、十日二十日、なか

三十日、お金を戴こうなんとは甘い甘い、払っ。  大体が、中寄り棒も入っとらんグゥイターなんぞ話にならんわい、」

「 トラスロッド、でっしゃろ?初期型の テレキャスター も入ってない」 「之は レスポー型 じゃろが、」 「 御隠居?、

さっきっから声が、誰か来た様でっせ、待たせちゃ悪いですがな。」 「お前さんに言われとぉないわい、グゥイターの材料

持って少し待っとれ、  ちょとまてッ、プレリュード じゃゎい、落人はな、このろくすっぽ、」



「これはこれは。御機嫌宜しゅう御座います。態態御出で戴くとは幸福中の幸い。ささっ、此方へ。 なんですと?。忙しいの

ですか。  お構いも出来ませぬと。  いぇいえっ。  今後の商いも宜しゅう御願い致しますですがな。  またどうぞ〜っ。」


「御隠居さん、誰でっか?、」 「お前さんには一生縁の無い両替屋じゃよ。」 「両替屋さん でしょう?、」 「呼び鈴ぐらい

鳴らせばいいと何時も云っとろうが、 全く。  熊、己は心持ち、板わさ食って、お茶の時間かぇ ?。」 「エゲレス人 は小麦

胚芽焼きと インド発酵茶の」 「此処は極東日本じゃいッ!、壱千八百年早いわッ。  しかし旨そうじゃな。」

「ご隠居も、どうでっか?、」 「ほほ〜ぅ、中々の一品じゃのう、だが、その緑茶、熱そうじゃて。」 「もう冷めてまっせ 多分」

「どれどれ、 熱ッ!、 つつっ ! 、くまふぁち、殺す気か。」 「大袈裟ですぜ、ぐぉいんきょ〜 、両替屋さんての、融資の話し

ですかぃ?、其れとも手数料払って両替」 「おまえさんには関係の無い商売のはなしじゃよ。このわしが猫舌じゃという事も

知らんと、熊八は統計経営学なんぞ判らないじゃろて、いいんじゃよぃんじゃよ。」 「おいらだって、問屋の倅、八男坊です

けんど、だから 熊八って名前」 「そんなこと聴いとらんがな。今は両替の手数料掛からないのも知らんと。  ふっ。

もうええがな、ぐだ愚だ話はこれくらいじゃて、お前さん御望みの 夕ご飯 じゃよ。 なっ?、だろっ?、要らんのか?。」

「勿論戴きまっせ。  何ですかこれ、握り寿司 じゃありまへんがな、ちらし、ですかぃ?、」

「わしは 蜘蛛の子ちらし が好きなんじゃよ、要らんなら喰わんでもよいぞ。」 「それが言いたいが為の チラシ、ですか?

御隠居さん、」 「喰わない食べない要らないんじゃな、勿体無いこっちゃて。」 「腹ぺこでっせ、食べまんがな、」

「腹が減ってなけりゃ食べたくない。そう聞こえるのはこの ワシ だけかのぅ。」 「ぐだぐだ話しは止しましょうや隠居さん、」

「お前さんの事を思うて、とは言わんがのぅ、寿司桶 の容量積を考えれば判ることじゃて、握りよか ちらし寿し の酢飯の

ほうが 、、、 熊八、 お前さん製作の、その グゥイター の横へ、一筋の光が、蜘蛛の糸が下がっとるぞいっ、熊ッ!、

近づくな、それは天空からの御試し糸 じゃてッ、触るんじゃねえぞッ。」

「お釈迦様の蜘蛛の糸、でっしゃろ?、てぇことは此処は血の地獄池、のわきゃないでしょう?、」

「 お洒落老眼鏡買ぅたんじゃ、なんでも観えるよって、お前ぇさんの鈍ら眼力とは違うのじゃよ、判ったか?。」

「そんな歳でもないでっしゃろん?ナマクラは言い過ぎでっせ、咬ますの止めて下され、なんて云っても通らないのは

判りまんがな、そぅいゃ先日 飛脚高速便の方が来てたけんど安そうな眼鏡でんな、西洋ガラスの表面ぬゎんか付いて

まっせ、傷防止用の セロハン貼ったまま、プッ、其れんで良〜く見得るんでっか?セロファンじゃぃ!はぇえでんがな、」

「しょうがあんめぇ、似非京阪弁喋んのよせぃや、2.0 の鼈甲風ツルが折れて医療用瞬間接着材修理も間々成らぬ

1.0 買ったら度が合わぬ想ぅとうたところじゃょ、傷つかぬもの、ダイヤモンドじゃのぅて剥すのも大変やで、

優〜しく ネチネチ取り去れば世界は広がる、なんだょ、只の コガネグモの大網 だったか、つまらん。

それよかの、ぉ前さんが置いてった大工道具、もちぃと大事に扱わんと勿体無いんぞ、質屋叩き込んでも良かったんじゃ

がの、善い物だったからこのワシがちゃ〜んと保管、話し聴いてんのか?売れるかどうか分らん グゥィターでもさ、魂込めて

作れば判ってくれる人はちゃんと居ると思うがの。」 「売れ残ったの、御隠居が弾けばょぃじゃないでっか?三味線の心得

有るっ言ってたでっしゃろ、」 「そんな事云ったっけか?の、物事ゃ製品は偶像じゃぞぃ二束三文の金剛草履でも高く売ろう

思へば。」 「そ〜ゅーの良くないでっせ御隠居さん、使って貰って弾いて良かった相手の満足度合だと思いまんがな、」

「商いはの、物品売ってが基本じゃぃ売れちゃえばこっちのものさね。」 「違うでしょ〜?気分良く買ってこんな性能が

秘められてたのかて思うのも嬉しいかと、」 「甘いんだよッ売ったもん勝ちじゃ言ってんだろが、一本も売れてないのが

よく言ぅの。」 「まだ売ってない試作の段階でっしゃろ?、」 「ぃい訳はぇえんぞぃ、大八車乗っけて売って来いゃ話はそれ

からじゃい!。」 「ぉぃら物売りは苦手ですからね、ご隠居も知ってるでしょぅ?、」 「その考えも甘々じゃの売れなかったら

恥しいなんて考えてるからじゃろん?誰に断って商売初め店だよ嗚呼ん?なんて因縁吹っかけられるのが怖いだけとみたが

どうじゃ図星ゃろが。」 「大体が屋号も無しで物売っていいんですかね、」 「八大号ってお前さんの デコへ筆墨描ぃたろ

か?プッ。」 「ふざけんの止めて下さいよッ、」 Traditional 老舗黒檀往銘楽器制作所 Instruments 「なんてのも好いと

思ぅがの、之位大上段構えれば売れるの間違いなしじゃて、どうじゃ?啼かせるゃろが。」 「カマせば売れる思ってる底儚い

想ぃじゃ売れないですね〜、」 「文句はそこまでじゃょて、大事なんは買い手の気分と安心感の会得奥義の充実もじゃぃ

何年生きとる想うてんのかッ!舐めんじゃねぇぞて事さね。」 「 だ か ら そ れ じ ゃ 売 れ な い で す 、」

 「なんやとコラッこの裏切り者が!。おめぇさんワシの言う事聞いてりゃいいんじゃょ。リスキービジネスなんぞ興味ないゎ。

マッチ1本の売手その何百倍もの利益率上げる事が勝ち抜く秘訣やぞ。オラリエンス・トータル・ハザード云ぅても理解できん

想ふがの。まだ創めてないでしょう〜じゃねぇぞえ!。このわしはな、そん所の只の問屋だとぉもぅて貰っちゃ困るだでゃ

そこが理解できんのは仕方が無いんが。 熊ッ 駒八!ドコ行ったんじゃぃッ。」







「遥か何処行っとった!話し途中やんがッこのワシ差置き勝手な行動以後慎むがよぃ、なんて云いそうですね御隠居、」

「わしはな、心が広いんじゃよ、そんでどうだった?大八車乗っけて売り歩いたんじゃろ?。」

「それが、全く、 興味も持ってくれなくって、値段手頃でも烙印が無くちゃ無理もないかも、」

「それは違うぞクマ、お前さんの腕前は 一級品だとこのわしが自負済み、其処が落し穴だで、人は完璧な物や事柄を

追い求めるが実際は違うのじゃょ、少しだけ隙間があるほうが心惹かれる。てものさね。」

「なんで木工細工や漆塗り乾燥も完全な製品作っちゃいけねぇってんですかね?、隙だけで作れってんだったら無理、

できまへんがな、」 「そんな事言ってんゃないんょ、ちょとまち 大八車と の組合わせが悪いんかの〜傷付かぬ様は

ょぃんゃが、見た目が善くないからか、八台座の上、高級絨毯敷くか?どうじゃわしの考ぇ。」 「                、」

「止ん事無きのビジネスだからのそりゃ大変なんは判るがの、もちぃっと考ぇんと商売は上手く進まんて。」

「やんことなきって言いたいだけでっしゃろ?ジュウタン張って車輪紅く塗ったって駄目でっせ余計胡散臭く見えると、」

「ぅさん臭ぅても良いんじゃよ、ことじゃなぃゴトゃ駱駝双瘤のマークでも ヘッド貼付け ウサン満載てぇのもな、

これも十二文良いアイデアじゃと思ゎんか?、商品の善し悪しは二の次、壱頭最初はイメージ作りゃで、

大体がの、指板は黒檀、胴体は樹齢三百年樫の木なんぞつこぅて生産効率も全く無視、漆塗ったら乾かんゃないかッ。」

「カっ、なんて怒ったってしょうがないでっしゃろん?金属部分は切磋真鍮製でっせぇえ響きですかね煌びやかんな見た目と

「誰が偽京坂弁喋れぃぅたんじゃ?、生れは西の方でんがなじゃねえんだょ、そんな事知らんぞぃぉ前ぇさん何所のモン

じゃぃ!偽っとったなッ!、てぇ事も云わんょそんなん関係無しじゃしの、このグゥイターが売れれば文句なしじゃての、

たばかる、謀れとは言わぬがの、当然口上は上手くぃったんじゃろな黙ってちゃこの馬鹿でっかい大八車売ってると

思われるぞぃ。」  いゃあの、口下手人見知りなものですんで〜、」 「グゥイター横で突っ立ってただけかょ証文ないの〜

営業力不足所じゃないんぞぇ。」 「さァいらはぃいらっしゃぃ本日大安売りですがな見て行ってぉくんなさぃまし、全部手作りの一品ですがね、

ぐらいは言いましたですが、」 「聞えへん、云ぅてないのと 一緒やぞ御前さん。」 「苦手なんですよ!、」

「苦いお手々なんか?そんなん聴ぃとらんぞぃ、甘ぃあまぃ、一目見たな買えゃくらい言っても罰当らんぞッサプライズが

必要じゃな。」 「桜海老?、」 「ちゃぅがな引っ掛かったな、食いモンとアレの事しか興味ないんゃろ 熊八。」

「そんな事おまへん、」 「勘違ぇすんなよん熊、ボランティアじゃないんゃぞ。」 「無償の自主奉仕でっしゃろ?、

そんな事判ってまんがな、モノを作って買って下さる客人が満足すりゃ」 「違う々、社会貢献じゃよ底の浅い奴ッちゃの〜。」

「金儲けは駄目て事じゃないんでっしゃろ?おいらの食いっぷちくらい稼げれば」 「だったらサッサとグゥィター売って来いゃ

崖っ淵から虎の子ヲ落とし這い上がってきたモノだけを育てるタイガーゃさかいな。」 「比喩でっせ、崖から一匹も上がって

来れないそうじゃありまへんか、」 「だから例え話ゃ云うとるだろが。」 「ぉ声が裏返ってまっせ、」 「五月蠅いゎ!。」

「オノレの足元も固められんのが社会貢献の〜奉仕がァー云ぅてるほうが簡単だからでっしゃろ?、」 「ふッ違うがなクマ、

そんじょソコらの人間と一緒されてなんですか御隠居又訳の判らない戯言誰がタワゴ損な事言ってまへんがなェセ京坂弁

ゃめんかさ失礼でっしゃろ?熊八ぃい加減順追ぅて考えて良かろうぞん面白くないですね〜張ボテ駱駝じゃなぃん なんだと

コラ、一緒くた喋んじゃねえょ!。」 「二番煎じでっせ、」 「ふっ間違ぇとんぞ 三番ゃぞ、こんな番茶薄くって飲めんぞぃ、

知る人ぞ シラナィ生休の一品なんて意味無いんじゃょ、心象こそが一等最初の理念ゃよぅて、此処は一発の大逆転、

大々的宣伝噛ませば売上げが伸びるてなものゃて。」 「一本も売れてないんですがね〜御隠居、」 「其はソレ、

コレ等々じゃょ、能書きはもぅ良いんじゃて、名称は "五寸釘" なんてぇえ思うがな、どぅじゃ?熊。」

「トラッドnantokaハンドメードではないんですかね、」 「時代は流動的なんじゃよ、川の流れも良く見れば全く同じものは

なし、で決まりゃ、そぅじゃろ?。」 「装飾なんぞ必要無しって云ってまへんでしたか?小鑿で穿って貝殻接着」「違うがな

型作って鉛流し込みスポンと嵌め込んどきゃぃいだろ?素人は判りゃへんゎ。」 「 オイ等も製作はトーシロなんですがね

判りまんがな、それよかそっちのほうが大変ですよって、」  「理解道の隔たりがありそうやの、困った。」 「九官鳥の鸚鵡

返しじゃないんですょ御隠居さん、」 「其れも何所からか パクッたんだろ?この半人前がっ。」 「ちゃいまんがな、人はです

ね〜見聞きしたものしか物事を創造できないんですけどねぇ、」 「 ソレは何処かで聞いたんな〜クマ、 水ッ!。」 「川、」

「岩。」 「清水ッ、」 「ドヘンタイ。」 「バレンタインデー、」 「城。」 「真ッ黒、」 「ふっ 中々のものゃ熊、だがマダ々ゃて。」

「そんな褒められても、」 「心の隙があるの、誉めとらんゎ。」 「結局 トドのつまり、オイラ達の足元も固まってないんが

おこがましい云ぅことですゃんか御隠居さん、」 「逸れはワシの台詞だよ熊、判ってたらさっさーと グゥイター売って、

ちと待てょ販売作戦会議や。」 「二人で?、」 「そんれは違う 大人一人と半人前 1か1/2 だな、からてづの、

熊八アタマを拓ければ、脳味噌グツグツ煮立ってるってか?。」 「ご隠居の、頭部をパカッと観たならば、

ぁれ?中身が無ッ」「ごぅら!、ッ冗談でも止めぃゃ猿。 なんだこりは?、 重ッたい、鉄螺子で固定してんのかと思っとぅたゎ

ナンキログラムあんだよ熊ザル。」 「八キロチョぃですけんども、黒檀と樫ですからねぇ、」 「                     

良いかクマ、お前さんは腕の良い元大工だと想うとんのだよ、材料加工しかり、漆塗りの技法も由、しかし、だ、弾き手の

御客様の事を全く考えとらんのは盲点じゃったの、幾ら若い衆でも腰ギックリじゃぞぃ、治療費請求されたらどぅすんのか

わしは銭払わんぞっ、音色を重く響き深くすんのは質量が多ければ良い、だけではない、 振動が吸われて逆効果だとは

思わぬのか、少しは考えたらどぅじゃ?胴体部分も 壱枚板じゃなくっちゃ絶対駄目とは限らんのじゃて、そうじゃろ?熊。」

「違いまんがなご隠居さん、グゥイター全体 樫単板刳り貫き其処へ指板の黒檀を膠で圧縮接着してあるだけでっせッ、」

「                                      だから切り粉があんな大量だったのか、 困った、基本が判っとらんゎ

しかしま、努力だけは認めよぅぞ散々無駄な貴重素材思い切り使われても怒るようなわしではない、加工はさぞゃ大変

だったんたんじゃろ?。」 「ぃいぇちぃとも、御隠居の四次元工作機械使いましたんで、」 「なんだとこら、あれは未だ々

試作品なんゃぞ、怪我されたら適わん水式歯車倍力とはいえ、 まァぇぇがな、そんな問題じゃ〜なぃゎの、どだぃ、

なんだクマ八?、わしが散々言うたから心の整理が出来んのか?、難しい事言い過ぎたかも試練がのハチ。」

ブゥエっクショッ 「なめとんのか風邪でも引いたんか、こんな大事な事云ってる時こその心構えじゃぞ。」 「 プっ

聞いた風なクチきいてんじゃねえぞ御隠」 「誰じゃ今の不愉快な言動はクマお前か?。」 「ちゃいまっせ、そんな本当

ゃない失礼千万な事言いまへんがな、」 「 だとすんと、だ、毒吐きそうもない愛くるしい子鹿しか居らんゃないか。」

「書類に一生懸命話し掛けてるラクダってのが、」 「動物の分際で如何わしいの、無視じゃ。」 ガムクッチャクチャッ

カミ〜ン 「なんだか変なんが混ざってるようじゃの下品極まりなし。」 「大好物の癖して良くゅぅゎの〜隠居」

「このワシはな、アドミンさんと横の繋がりあんやぞ、お前らなんぞ一瞬で消せるのじゃて、後で泣いても遅いわっ

謝るんじゃったら今の内じゃよ分ったか?。」 「ご隠居さん空耳ですか?、」 「ほほぅ、だったら試すかの、rootさん

ぉ願ぇ致します。」 「 あたぃ御隠居さんの事大好き、だって浮き袋の煮込み美味しかったんだもの、、、、」

「鹿喋っとるがな、この世界はな、ワシの小手先壱つじゃぞぃ、裏切ったり非無礼な事言ったら只じゃ〜済まんぞ。」

「ぉ一人でなにブツブツ言ってるんですかご隠居さん、」 「 鹿はな、神の使いなんじゃ良くぉ言葉聞かないと撥当んぞぃ。」

「ま〜た聴き齧った事云うて、両耳掴まれまっせ、」 「隠居っ、今からお前ぇさんのぉ名前 壹貮參肆伍 ひふみしんご だな」

「なんだとコラッ誰じゃぃ有りがちつまらん駄洒落名言ぅたの熊、お前か?。」 「違ぃまんがな、粥鬨虞平だょ」

「ぃいから無理すんなって事さね、ワシの前では取り繕らわず己の技量以上の事を考えんでも良いんじゃよ。」

「それは御前だよ猿」 「このわしを怒らせるつもりか?。」 「だから御隠居さん、さっきから何ブツクサ云ってんでっか?、

呼び鈴が鳴ってまっせご隠居さん、」 「まァぇえが、店や門ゃで今日はタヌキ蕎麦だったんな。」 「ぇ! キツネのほうが

良かったっ、何時から京坂弁喋ってるんでっか?それと店屋物ですけん」 「煩ぃゎタヌキの旨さが判らん壱/八人前の

分際で。」 「長女の姉ちゃん居るから九人の」「聞ぃとらんゎ熊。」 「揚げ玉ってのぁんまり〜好きじゃなくって、」

「飴玉なんて入ってんのか?。」 「良ぅがしょぅさっさと喰っちゃぃましょうゃ、ね?御隠居、」 「へへっ、ぐへぇッ と云ぅたら

喰ぅても良いぞ」 「下品でっせ、噺が通りまへんがな御隠居はん、肉欲の塊分際でなんだろね〜」 「なんじゃとコラッ。」

「 ぉぃらなんも云ぅてまへんがな、suさんかも、」 「なんじゃ? ス てぇの? ワシよか頭が良い思ぅとんのは違ぅ言うてんの

じゃょ。」 「あたぃに付いて来ぃゃ隠居」 「子鹿喋ってまんがな、へ〜ぃ御尤もですがなでっしゃろ?御隠居、」 「誰に言っ

とんじゃぃ。」 「人間共の分際であたいに逆らおぅってのか?」 「鹿鍋だな、熊八。」 「子鹿は喰っても旨かなぃじゃなぃ

ですがな、駄目ですよ短気起こすのは、御隠居、」 「口車の八、参上です」 「誰ゃ己は?。」 「思いつきの 一品ですけん」

「噺が通らぬぞぇ、シナリオが間違っとんの。」 「駄目ですょ隠居、西洋の言葉使っちゃ、」 「rootは良ぃんが ボンドは善ぃ

のか? 熊。」 「他愛無ぃ縁側話ですからね、御隠居様、」 「無の境地と呼ぶが好ぃ。」 「御隠居?、でぇじょうぶですか?、」

「無論じゃとも。」 「なんかが憑依、変な宗教入ってるんですか?、」 「戯けもんが、入っとらんょ。」 「神の御加護とか言ぃそぅ、」

「そんな事 言ゎん云わんぞぇ。」 「不安な事ゃ悩んでんだったらあたいが聴いてあげるからさ、ねッ」 「この シカ、勧誘鹿かも知れんぞ。」

「御隠居、さっきからなにブツブツ言ってんですかぇ?、」 「かぇ?、じゃねえぞッ同じ事 何度も云ぅのは御法度じゃぞぇ、嫌じゃ嫌じゃ、

愛らしぃぉ顔しおってアタマくる 子鹿じゃの、夜鳴き鹿鍋 てぇのも。」 「鹿鍋は駄目でっせ、動物保護の観点からも、」 「偉そぅゃの

熊八、難しそうな事 言ぅたつもり じゃがしかし、動物愛護の方々は 霞 吸ってるそぅじゃの、熊。」 「天空から 米粉が降ってくると

思い込んどんそうですょ、御隠居、」 「何所の 不明の国なんだょ、おめぇさんはょ。」

続く。