オンボロ シンセ メンテナンス の巻 ( 其の二 )

発売当時、70万円もした Emu Emax サンプリング シンセサイザー を安く手に入れた。デジタル機器など中古で安く

購入するのが 一番で、非常に高かったメモリー、IC チップも今は安く製造できる。昔の高価格な デジタルシンセ は、

メモリーチップ が価格の大半を占めていたそうだが、カスタムチップは 今は製造されていないので吹き飛ばしたら

おしまい。イタリア系デザイナー が作り上げた 紫灰色のボディ。斜めに配置された、くすんだ ピンク色のボタン。

日本人には真似の出来ないエレガントなデザイン。私のようなテクニックの無いものでも弾きやすい フニャフニャ で

頼りない鍵盤。前の持ち主が ふざけて作ったような、内蔵シーケンス による チンケ なデモ曲。メインメモリー が少ない

ので、操作をする度に、フロッピーディスク を読み込む使用感。ピッチシフト をさせただけで、システム が フリーズ して

いるのか?と勘違いするほど遅い演算装置。これではまるで、ちょっと前の イタリアンスポーツカー、見た目は凄いが

狼の皮を被ったヒツジ の様。国産中堅スポーツカー に軽く追い抜かれる 情け無さ。ブランドで選んだり、味は二の次で

プラスティック で出来たような トマト を購入したりと、見た目を異常に気にする日本人にはぴったり。などと言いながら

デザイン の悪い機器は使う気がしないが、Ensoniq MIRAGE は別。ちなみに、MIRAGE の意味は 蜃気楼 または妄想

儚い夢。この 狼皮ヒツジ の調子が悪い。フロッピーディスク を挿入して電源を入れると、小さな 液晶画面 が文字化け

するし、鍵盤の スイッチ が誇りだらけなので、接触不良を起こしているのか音源が発信しない時もある。

その前に、タバコ の煙のほうが精密電子機材には悪く、スイッチ の接触部の隙間に入り込むので絶対に喫煙するな、と

言われたことがある。鍵盤を押さえている時間より、煙草を吸っている間のほうが長いので、微細な紫煙は機材が

傷みそうだが、そこはそれ、極端なモノの考え方の アメリカ人の、「自己管理が出来ていない、タバコ は体に悪い、

毒である。周りの方の迷惑になる、人格が、」 などの海外からの考え方を単に輸入しただけ、流行言葉、葉煙草、真似を

しただけだと思っているので、喫煙時の複流煙には気をつけて、毒タバコ を愛飲しています。が、この ” 自己管理能力 ”

という言葉、「全く!、タバコ なんか吸って、自己管理が出来ていない、人格的に、」 と喫煙所のスモーカーに向って熱弁を

奮っている外国人女性が、砂糖をまぶした甘い ドーナツ を頬張りながら、いったい何百キロ あるのですか? と思うほど

太った巨体を揺らしながらの日常風景には、それはどっちなの? と考えさせられて、中々 面白いです。

大きな ドーナツ、紫の煙は さておき、この大きく場所を取る紫灰色のアメリカ製 Emax 、メンテナンス を兼ねて臓物を

拝見。巨大な筐体の ガタイ でも、中身は スカスカ だろ? どうせ、と高を括りながら分解してみれば、一枚岩のような

基板に カスタムチップ、メモリー が山のように張り付いていて、老舗店の 中華まんじゅう のように中身が ギッチギチ。

電子部品の集積率が悪かった頃の製品だとしても、手間と時間を掛けた贅沢な作り、流石は米国製。(えっ?)

慎重に中身を外して、筐体に組み込んである鍵盤と共に、風呂場でぬるま湯洗い。筐体に施してある塗装は剥がれ易く、

原液の家庭用洗剤の界面活性剤でも傷むので、泡立てた泡で手洗い。活性剤は表面の ホコリ、煙草の タール成分 を

取り除いてくれるが、最も良いのは泡の弾ける力で落とす事なのだそうな。泡の力など大した事がない、タワシ で

ガリガリ 磨いたほうが落ちると思いがちだが、顕微鏡で確認すると泡の洗浄力が勝っている、との事なので、Emax を

泡だらけにしておいて、そのまま湯船に放り込み、じゃなかった、シャワー で洗い、女性を扱うように タオル で優しく

水分を除去して、(大丈夫か?) 湿気の少ない部屋で、暫し乾かし組み直し。水分が残っていると、電源を入れて

オシャカになるかもしれませんが、全く問題なく作動します。お試しあれ。

つづく。

銀塩 場違い 一眼 ホラーカメラ

20年以上前に購入した 一眼レフカメラ を、たまには使用しなければ勿体無いと、カメラ 片手に清掃。カビ でも生えてや

しないかと、裏蓋を開けて ビックリ 玉手箱。龍宮城帰りの御爺さんになるなら良かったが、フィルム を装填する

蓋が ドロドロ に融けていた。蓋が融けていたのではなく、光が入らないように取り付けてある モルト という パッキン が

蓋の開閉をする度に、フーセンガム のように ネチャネチャ と伸び縮み。シャッター と連動して動く ミラー部 も、本来なら

瞬時に作動しなければならないのに、スポンジ状 の 衝撃吸収ダンパー が融け、シャッター押すたび ヌルルルン と

飴細工 。 水中でも撮影可能な 全身ラバー に包まれた 全天候型カメラ を大事にしまっていて、いざ使おうとしたら

融けた ゴム の塊になっていた、という話を聞いたことがあるが、埃を被ろうが邪魔だろうが ケース や引出しに しまって

置くのが いちばん良くないそうな。また、毎日使用している電化製品は壊れにくく、往年の お宝パソコン や、電子部品の

詰まった精密な可動部分のある モノ は使わずに何年も放っておくと、電源を入れた瞬間や動かした時に壊れやすい。

それは人間と同じで、準備体操もせずに いきなり激しい運動などすれば、体に負担が掛かるのと同じこと。

真冬に乗用車を エンジン が温まったからと、最初から全開走行などすれば、ミッションや デフ、ベアリング類 に

負担が掛かり、部品の寿命が縮まる。大事に しまっておいたら壊れて、しょっちゅう使っていると長持ちする。

これは、新品の畳が日に焼けるからと雨戸を締め切り、その結果、腐った畳になるのと同じこと。(えっ?)

原油から化学的に作られた製品は、時が経つと元に戻るという話を聞いていたので仕方がないことかもしれないが、

海外製の カメラ は往年変化が判らないので、なるべく新素材を使用しないのだそうな。何が使われているのかと

調べてみれば、丈夫な 麻紐 や 木綿糸 が使われていた。自然素材を使うと手間が掛かり、コスト に跳ね返ってくるので

カメラ が高価になる。歴史のある ゴツイ 海外製カメラ は流石に違う、適切に使用すれば 一生モノ、とは思わないが、

電池が切れれば只の電子部品の塊と化す 日本製カメラ と違って、アマゾン の奥地まで入っていく冒険家や、エベレスト

登山カメラマン が乱暴に扱おうが、少しぐらい落下させようが簡単には壊れないし、機械式なら電池も使われていない。

最も単純な構造で自然に撮影することが出来るのが、ピンホールカメラ なのだそうな。内側を黒く塗り潰し、1ミリ ほどの

穴を開けた紙の箱に、暗室で フィルム を装填しただけのものでも其れなりに写真が撮れる。それだと撮影に時間が

掛かるので レンズ が発明され、今日のような カメラ になったのだそうな。被写界深度を深く、シャッタースピード を

速くすれば良いのでは? と素人の考えを言ったら、物理的に相反するものなのだそうな。レンズ の基本原理は

100年以上前と、何も変わっていない。28mm から 800mm の非常に明るい ズームレンズ は設計が困難だそうで、

明るく口径の大きな、ピント の合う被写界深度の幅が広く取れる色再現の完璧な レンズ設計 など不可能で、

自然界に真っ直ぐな物質が無いのと同じで、設計上、何処かで妥協しているのだそうな。海外製の高価な レンズ には、

独特な味がある、色再現も素晴らしい、少しぐらい ピント が あまくとも気にならない。日本製のレンズ は、解像度は

良いが色再現が悪い、ということで、解像度と発色の性能を兼ね備えた レンズ を作ればって、それも不可能に近い

のだそうな。いくら海外製の レンズ が素晴らしくとも、そんなに変わりが無いだろうと実際に風景を撮影してみれば、私の

腕が悪いのを差し引いても、目で見た通りの写真など出来なかった。ホラーカメラ になる前の完調な状態でも、レンズ に

フィルター を噛まそうが、露出補正しようが、逆光に気をつけていようが、フラッシュ を焚こうが、水洗いした油絵のように

色がくすんで モヤモヤ した画質になるのも、どうなんでしょう。試しに安い オート コンパクトカメラ を購入して、同じ場所を

撮影したら、その風景を切り取ったような 一眼レフ とは大違いな素晴らしい写真が出来上がったので、その事を

カメラ の販売員の方に質問したら、苦笑い。苦情を言っている訳でもなく、只単に感想を述べただけなのに、あやふやな

返事しか返ってこなかった。その事を、カメラ に詳しい知人に尋ねれば、青い顔と呆れたような表情が混ざったような

態度。そんな愚問など聞けぬわ、切り捨て御免、問答無用、成敗してくれようぞ、と 一刀両断にされるのかと思いきや、

「それを言っちゃぁ、オシマイよ」 との御返答。コンパクトカメラ は、ピンホールカメラ に特性が似ていて レンズ の口径が

小さく、無理な設計や色補正などしていないので、綺麗に写真が撮れるのだそうな。高価で重い 一眼レフ、安くて お手軽

コンパクト。写真を撮るのが本業ですよね? 本質ですよね?、と皮肉でもなく素朴な疑問おば、解消したく調べてみれば、

地球上で最も優れた レンズ は、人間の目なのだそうな。瞬間的に ピント が合い、自動露出補正、逆光補正、色再現、

歪みのない広角再現性など、長い年月をかけて改良されてきた 先人達の レンズ技術 も、未だに人間の目に遠く及ばない

のだそうな。それなら カメラ に眼球を移植すればって、それこそ真の ホラーカメラ。人間の瞳ではなく 本マグロ の魚眼を

って、写るのかいな。

つづく。